次世代を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ環境をつくるために、O五年四月から一0年間で国や自治体、企業が行動計画を作って取り組むことを求めた時限立法である。
次世代法は、従業員三O一人以上の企業にO五年の行動計画をO四年度末までに作り、都道府県の労働局に提出することを義務づけている。
なお、三OO人以下については努力義務になっている。
働き方を見直すための企業の取り組みとしては、所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、多様就業型ワ-クシェアリングIT利用のテレワ-ク導入など内閣府の少子化と男女共同参画に関する専門調行査会で、最近、興味深い調査結果が報告されている。
OECDに加盟している三0カ国のうちの伸一人あたりGDPが一万ドル以上の園、二四カ国第を対象に女性の労働参加率と出生率の関係をみると、5女性の社会進出が進んでいる国で、出生率も回復しているという結果である。
これについては、そういう関係にない国は除外されているという批判もある。
たしかに、こういうたぐいの議論や、推計結果をうのみにするのは危険である。
意図的に操作されているかもしれないとまずは疑ってかかった方がいい。
事実、健全な批判をおこなっている。
ただ、赤川批判を受けて、この専門調査会の分析では、対象国が大幅に増やされている(一三カ国から二四カ国に増加)。
また、女性の労働参加率と出生率とのあいだにプラスの関係がみられるのは、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ルクセンブルグの六カ国であるが、これらの国で七O年には、同じ変数(女性の労働参加率と出生率)のあいだにマイナスの関係がみられたことから、この三O年のあいだにこれらの固でマイナスからプラスに転じる大きな変化がおきたことがわかるそれが全体の結果に影響を及ぼしているのである。
ちなみにこの事実は、人口学者のあいだでも広く共有されているものである。
この出生率と女性の社会進出の関係が三0年間でなぜ反転したのかについては別の機会に論じるとして、わたしがこの結果をみておどろいたのは、全く別の理由からであった。
前述の女性の社会進出が続くなかで出生率が回復した国のうちの三つの国(アメリカ、デンマーク、オランダ)は、スーザン・ハウスマンとともに開催した国際会議で、経済のグローバル化に比較的うまく対応している国でもあったからだ。
ここでこれから論じるイギリスも結構うまく対応している。
女性の労働力率も出生率もそこの水準にあり、また、不安定就労者の数も大きくふえているわけでもない。
ここでいううまく対応しているというのは、不安定就労をしている非正規労働者の増加が少なかったり、不安定就労から安定就労への移動がうまくいっていたり、パートタイム労働者の増加が、自発的な選択の結果おきているといったような理由で、社会へのマイナスの影響が少ないといった意味である。
なぜ経済のグローバル化にうまく対応した国は、出生率も回復しているのだろうか。
その理由は、働き方にある、というのが、わたしの結論だ。
るす女性が働くと出生率が下がると考えられている。
子ども数が少ないのは、妻が雇用者として働く世帯のみである。
汚、女性が雇用者としてはたらくことが一般的になった社会のいくつかで、出生率の回復が付みられるのは、それらの国で、ただ単に保育所をふやすだけでなく、労働時間を短くしたり(デンマ行-ク)、夫婦ともにパートタイムで働ける環境を整えたり(オランダ)、仕事と家庭の両立がしやすい働き方ができる社会で出生率が回復しているのである。
それではこれらの国は、なぜ経済のグローバル化にうまく対応しているのか。
それも働き方にある、というのが、わたしの結論だ。
すでにのべてきたように、経済のグローバル化は柔軟に活用できる労働者の需要をふやす。
それをすべて外部の労働力の調整機能に頼るのか、それとも企業が直接雇っている労働者の働き方を柔軟にすることで外部の労働力の活用を最小に抑えるのか、どちらの戦略を使うのかによって、臨時労働者がどれだけ増加するかが決まる。
臨時労働者だけに頼ってしまうと、短期的には経費が削減できるのかもしれないが、長期には失うものも多い。
イギリスで取材した際に、ロンドン大学のシエリ-・デックス教授から聞いた例なのだが、イギリスのある住宅金融共済組合では従業員の四割が臨時労働者であったという。
何もかもがひどい状態で経営がうまくいっていなかった理由は、臨時労働者にまともに働く気がなく、正職員はかれらに繰り返し教えることにいらだっていたからだという。
デックス教授は、インタビューのなかで、従業員に尋ねることですね。
従業員の満足度が高まり、生産性が向上すれば、臨時雇いへの依存度は小さくなります。
」とのべている。
わたしたちがハッピーに働ける柔軟な働き方を職場で生み出していくこと。
それが企業の生産性の向上にもつながる。
そうすれば、過度に非正規労働者に依存し、不安定就労をふやす必要もなくなるそれを追求したことによる、意図せざる結果があるとしたら、それが出生率の回復ということなのではないだろうか。
こう考えると、働き方を変えるということは、少子化対策としてとらえられるべきではなく、日本の企業の生産性を向上させ、経済の国際化のなかで競争力をつけるための施策として位置づけられるべきなのだ、働く側も、ヮ-クライフバランスが保てる働き方ができることで、子育てが楽しめる。
それが出生率の回復に結びつくことは十分ありえるのだ。
若い子育て世帯が何よりも望んでいるのは、まず、楽しんで子育てがしたいということではないのだろうか。
埼玉県が次世代法の施行にともなって、NPO法人と共同で、O五年三月に作成した『働き方と暮らし方の見直し応援マニュアル〈埼玉版〉』には、以下のような記述がある。
子どもの数を増やすための少子化対策ではなく、若い親たちが子育てを楽しめる社会、子どもが子どもらしく健やかに育つ環境を整えるためにはどうしたらよいのかという視点で、この少子化問題をとらえたいと考えています。
(中略)日本は二O代・三O代の男性の残業時聞が他の先進国に比べて著しく長いこと、男性の家事・育児時聞が非常に短いことで知られています。
(中略)働き方の見直しをしなければ、子育て支援は完成しない。
ひいては少子化も解決しないだろう」とわたしたちはいつも考えていました(『働き方と暮らし方の見直し応援マニュアル〈埼玉版〉』。
長時間労働の文化はアメリカやイギリスや日本で顕著にみられた。
ただ、アメリカとイギリスの違いは、イギリスでは政府がそれ(ワ-クライフバランス)を積極的に後押ししているところである。
なぜ、政府はこのようなワ-クライフバランスの導入に関心を示したのだろうか。
ロンドン大学のデックス教授は以下のように説明する。
策を探りはじめました。
親たちに何が必要か尋ねたところ、保育サービスの充実に加えて、勤務形態の柔軟化が必要だとわかったのです。
つぎに政府は、この問題に取り組むにあたり、圧力をかけるよりも奨励策を探りました。
二OOO年にワ-クライフバランス・チャレンジ基金を設け、何百万ポンドという大金を投じて、柔軟な勤務形態の導入を考える企業を支援したのです。
」背後にはつぎのような経済変化があったという。
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